「政治と経済のぎりぎりの妥協点」探るタスクフォース
本書で頻繁に登場するのが、ビッグ3と日本自動車メーカーの競争力比較分析。ビッグ3の問題の本質の1つに固定費化された労働コストがあり、このコスト圧力を回避するために需要を上回る量産を行ってしまう。この結果、市場での販売価格が下がり低収益を招くという悪循環が発生する。タスクフォースはこの問題を早くから掴み、破産法適用と、合併戦略を駆使したリストラプランを練り上げていくわけだ。冷徹な数字(例えば標準的なGM車とトヨタ車には4000ドルのプレミアム格差が存在)に裏打ちされた合理的な再建シナリオを描くとともに、大統領レベルの政治決断も加味して総合的な結論を下すことにより、政治と経済のぎりぎりの妥協点をタスクフォースは探っていく。この手法は、大胆な経済リストラ政策を講じる際の1つの規範たりうるだろう。
本書の最後の方に、GMの失敗の本質を、タスクフォースメンバーが対外的に説明するくだりがある。曰く、「GM一家の閉鎖社会」、「説明責任の欠如」、「切迫感の欠如」、「変化を嫌う体質」、「負け組根性」等々。今後、抜本的な構造改革が必要になるに違いない我が国の主要産業セクターの面々がGM病にかかっていないことを祈る。
経済官庁(審議官級)パディントン
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