開会中の通常国会では、平成25(2013)年度予算案が衆議院で審議中だ。国会の開会中、中央省庁の若手・中堅職員の大きな悩みの1つは、国会議員の質問通告への対処など国会対応で、深夜(早朝)に及ぶ超過勤務や休日出勤を強いられるということだ。
これは、やりかけの他の全ての公務をさしおいて、最優先で迅速に事務処理が行われる、霞が関で仕事をする国家公務員に特有のものだ。立法府への説明責任を果たすため、多大なコストを払い、大変な努力が注力される。日程がきちっとしている地方議会対応の比ではない。公務員についての評論家として知られる元労働省の中野雅至氏の『キャリア官僚の仕事力』(2012年 ソフトバンク新書)でも、大いなる希望をもって国家公務員を志望した若者が、仕事を辞める原因の1つとして指摘されている。
深夜(早朝)、休日に及ぶ国会対応
この問題に係る行政府の改善願望として、「各府省の若手職員等に対するヒヤリングの結果(概要)について」(2001年2月 内閣官房行政改革推進事務局公務員制度等改革推進室)や「財務省が変わるための50の提言」(2010年4月 財務省改革プロジェクトチーム)が遠慮がちに公表されている。ウェブ上でも閲覧できる。後者には、資料として「国会答弁作業の流れ」まで懇切丁寧につけられ、霞が関におけるこの問題の切実さを感じさせる。
中央省庁改革や司法制度改革で活躍し、憲法学の権威として著名な佐藤幸治京都大学名誉教授の『日本国憲法論』(2011年 成文堂)は、「……国会は実質的な議論を行う場というよりも、手続や審議日程が最大の政治的駆け引きの対象となる『日程国会』(それを支える『国対政治』)と称される、世界の主要な立憲主義国家では例をみない事態がずっと続いてきた」とする。このため、「国会答弁作業の流れ」に例示されるとおり、国会日程・質疑者の確定が前日の遅くにならざるを得ず、そこから行政府の国会対応の仕事が開始され、深夜(早朝)、はては休日に及ぶという、他の先進国にみない事態が現出するわけだ。