「アメリカ化」・「格差是正」・「大衆民主主義」の三者均衡
著者は、戦時下でも「鬼畜米英」のプロパガンダは国民に浸透せず、戦前昭和を通じて形成された親米感情はとだえることなく日本社会の底流を流れ続けたと分析している。そして、東条内閣崩壊後の流れは「親米派」の復権の過程であり、戦後、親米派主導下に再アメリカ化が本格化したとする。著者は本書を、戦前挫折した格差是正の試みも、戦後改革と高度成長による格差縮小となって実現し、戦後昭和の社会は「アメリカ化」・「格差是正」・「大衆民主主義」という三者の均衡の下に発展したと結んでいる。
このような著者のあまりに明快な分析については、いろいろ異論もあろうが、筆者は本書を読んで、従来「戦前昭和」という時代に対して持っていた単純で画一的なイメージを、抜本的に改めなければならないと痛感したところである。
経済官庁(I種職員)山科翠
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