「ピロリ菌除去で胃がん死予防に大きな変化」「除菌率向上には乳酸菌併用が効果的」――ヘリコバクター講演会

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   厚生労働省が新たに保険病名として認め、2013年2月21日から保険適用の対象とした「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染胃炎」に関する講演会が3月18日、東京・千代田区のホテルニューオータニで開かれた。

   テーマは「『ピロリ菌除菌』、胃炎への保険適用拡大の意義~『国民総除菌時代』の幕開けと"胃がん"の撲滅への期待~」。国立国際医療研究センター国府台病院院長の上村直実氏と東海大医学部総合内科教授の髙木敦司氏が、ピロリ菌除菌の保険適用の意義や正しい除菌のための対応策について講演した。

除菌で胃がん発症率大幅ダウン

上村先生(上)と髙木先生
上村先生(上)と髙木先生

   ピロリ菌感染者は現在、国内に約3500万人と推定され、50歳以上になると70~80%が感染しているとみられている。胃炎や胃潰瘍、胃がんの最大要因とされる一方、これまでは胃潰瘍や十二指腸潰瘍など明確な症状が現れた患者を除いて、保険でピロリ菌検査や除菌治療を受けられなかった。

   「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎、保険適用の意義」と題する上村氏の講演はまず、ピロリ菌について「主に5歳未満の幼少期に感染し、症状に関係なく胃の中にすみついて胃の老化を早めていく」と説明。ピロリ菌によって胃の老化が進む過程で「消化性潰瘍、過形成ポリープ、胃MALTリンパ腫、胃がんなどが発症しやすい素地がつくられる」と述べた。

   そのうえで上村氏は「除菌治療によって消化性潰瘍、過形成ポリープなどはまず罹らない、発症しなくなる」とし、「胃がんに関しては完全な発症予防はできないものの、間違いなく医療費は将来的に抑制されます」と強調した。

   除菌治療に関する問題点としては、「1次除菌治療(PAC療法)の成功率が徐々に減って70%台にとどまっている」ことに加え、「成功率90%台の2次除菌法(PAM療法)が二つの理由から1次除菌の段階で使用できない」ことなどを挙げた。

   ピロリ菌治療が保険適用された意義として、「胃がん死予防の戦略が大きく変わる」と語り、ピロリ菌感染と胃粘膜の老化・胃がんの因果関係に言及。「非感染者の胃粘膜は高齢者でも20歳のままで、胃炎や老化現象も無いため胃がんの発症は極めてまれ」と解説し、「完全な胃がん予防というのは難しいが、若年期に除菌すれば大半の胃がんは予防が可能で、高齢者でも除菌は有用」「除菌によって胃がん発症を30%に低下させたり遅延させる」と述べた。

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