常に手許に置き、たびたび読み返している2冊の本を紹介したい。
『いかにして問題をとくか』(Gポリア著、柿内賢信訳、丸善)は、数学を学ぶ大学生と数学を教える教師のために書かれた参考書である。著者は、多くの業績を挙げた著名な数学者であり、例えば、数学史上最大の難問として有名な「リーマン予想」が量子力学に関連することを示唆する重要な発見をしたと言われている(余談だが、「リーマン予想」に関する興味深い研究の数々については、『素数に憑かれた人たち―リーマン予想への挑戦―』(Jダービーシャー著、松浦俊輔訳、日経BP社)が比較的読み易く、お薦めである)。
問題解くためには、まず「正しく理解」
とはいえ、本書は、難解な高等数学を扱うものではない。問題を解く際に見落としがちな重要なポイントを丁寧に解説しており、中学、高校程度の数学の知識があれば十分に内容を理解できるであろう。
問題を解くためには、まず問題を正しく理解しなければならない。問題を理解するとは、未知のもの(つまり、求めるべき解答)は何か、与えられているデータは何か、前提となる条件は何か、をそれぞれ明確にした上で、それらの相互の関係に過不足や矛盾がないことを確認することである。問題を正しく理解できれば、条件が少し違う類似する問題に思い当たることで、解法の糸口が得られるかもしれない。正解に至るには、与えられたデータ、条件を全て使って解を求めることが必須で、そのようにして得られた正解は他の問題にも活用できる有用性を持つであろう。
本書を読むと、数学だけでなく、日々の生活の中で直面する様々な問題を解決する上でも、このようなアプローチが有用であることに気付く。加えて、この単純で至極当たり前なプロセスがいかに大切か、それを実際に行うことがいかに難しいか、を思い知らされるはずだ。これらのエッセンスが表紙の見開きに極めて簡潔にまとめられている点でも、本書は秀逸である。