「働く人」に良いことがあったか
雇用問題の関係では有名な文書がある。経団連が1995年にまとめた「新時代の『日本的経営』」だ。派遣社員や契約社員制度を提言した。その挙句が、非正規社員の増加だ。クビを切りやすい、安く使える労働力。新興国企業との競争激化で、コストカットの事情もあったかも知れない。だが、この制度がはびこって「働く人」に良いことがあったか?
そういう検討など、著者も評者もこれっぽっちもやっていないようにお見うけする。企業の御用学者だからとは決していわないが、企業サイドに芽生え始めた発想として条件つきで読みこなす必要はある。本コラムの読者の皆さまはどうお考えだろうか。
ほかでは、岩波科学ライブラリーが200冊を超えたことに、海部宣男さんが毎日新聞で触れている。とり上げたのは『シロアリ』(松浦健二著)と『サボり上手な動物たち』(佐藤克文、森坂匡通著)の2冊。珍しい生態をのぞき見るおもしろさは格別だ。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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