おととしの3月11日、あなたはどこで何をしていただろうか。未曾有の大災害となった東日本大震災から2年になる。風化という言葉も聞かれるなか、被災地では過酷な条件の下、復興へ向けて懸命の取り組みが続く。その一端を伝えるドキュメントを紹介したい。
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鉄道マンらはその時、不眠不休で…
『さんてつ 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録』
岩手県の海岸線を走る三陸鉄道は、東日本大震災で線路はもちろん鉄橋や駅舎などに甚大な被害を受けた。しかし、非常の時だからこそ、地元の足を止めるわけにはいかなかった。不眠不休で復旧に当たり、5日後には一部区間で運行を再開させたのだ。新潮社のコミック『さんてつ 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録』(著・吉本浩二、580円)は、鉄道マンたちの奮闘を描いたドキュメンタリー漫画だ。
三陸鉄道は「三鉄(さんてつ)」の愛称で親しまれているローカル線で、2つある路線のうち北リアス線は復旧が進んでいるが、南リアス線は今年(2013年)4月、ようやく部分再開にこぎつける。全線再開は2014年4月の予定だ。鉄道関係者はもちろん、地域の人たちにも取材し、復旧にかける被災地の姿を伝える。
震災直後の書店に出来た長い列
『復興の書店』
戦後の混乱期、書店に本が出回ると、活字に飢えた人たちが長蛇の列をつくった。それと似たような光景が東日本大震災直後の被災地でも見られた。震災から10日余り、仙台で一部の書店が営業を再開すると、開店前から人々が並び始め、あらゆるジャンルの本を次々に買い求めていった。本は生きていくうえで欠かすことのできない必需品だった。そして、書店がどんなに大切な存在であるか。書店員自身、改めて気付いたのだった。
小学館の『復興の書店』(著・稲泉連、1470円)は、困難な状況のなかで読者に本を届けようと苦闘する人たちを描いたノンフィクションだ。ちなみに、著者は2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しているが、母親の久田恵さんも1990年に同賞を受賞している。
被災地に鳴り響く生徒らの復興太鼓
『たくましく生きよ。 響け! 復興輪太鼓 石巻・雄勝中の387日』
東日本大震災は容赦なく教育の現場を襲った。校舎を、家を、家族を失った子どもたちに、教師は何をしてやれるのか。ワニ・プラスの『たくましく生きよ。 響け! 復興輪太鼓 石巻・雄勝中の387日』(著・佐藤淳一、1470円)は、宮城県石巻市立雄勝中学校の再生に取り組んだ校長の記録である。
生徒らに誇りと自信を取り戻してやりたい。そこで考えついたのが、地域に伝わる伝統芸能「伊達の黒船太鼓」だった。流された和太鼓の代わりに古タイヤを使って和太鼓ならぬ輪太鼓をつくり、授業に取り入れた。復興を願って輪太鼓を打ち鳴らす、生徒らのひたむきな姿が感動を呼び、ついにはドイツ公演に結びついた。教えの基本にあるのが「たくましく生きよ」。震災に立ち向かった激動の387日――。