霞ヶ関官僚が読む本
「地に足の着いた」米国流投資テク ファンド経営者らの意外な素顔とは

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産業の新陳代謝と創造的破壊の原動力

   ほぼ全ての投資ファンドに共通するのが、投資先企業の経営陣の選定に関する並々ならぬエネルギーの投入である。VCはもちろんだが、PEFも友好的投資が基本である。その際、既存のマネジメントとの協調に加え、必要と判断すれば当該業界に精通した新たな経営者の投入によって、会社の経営効率を高める戦略がとられることになる。あるファンドの場合は、ターゲット業界の収益率を4分割し、トップランク業績の企業を軸に、第3ランク業績の企業を吸収合併させることで、全体の収益性を高めていく。そのような戦略を成功させるカギが投資先企業のトップマネジメントである。このアプローチは、停滞する我が国の内需型産業の構造改革のヒントにもなろう。

   本書に出てくる10人のファンド経営者たちの平均年齢は65歳と比較的高齢である。ウォール街のハゲタカ系のプレイヤーとは異なり、シリコンバレーや地方都市を拠点に数十年に亘って実績を上げてきた彼らは、人情に厚く、倫理的とさえいえる人生哲学を持っている。彼らの多くが両親から学んだことをライフモットーとしており、それを臆面もなく語るところがいかにもアメリカ人らしい。「地に足の着いた金融資本主義」とでも言えばいいのか。彼らが米国産業の新陳代謝と創造的破壊の原動力の一部であることは疑いの余地がない。

経済官庁(審議官級)パディントン

   J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。
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