文庫と新書全盛の昨今、各紙が読書面の一角に紹介欄を設けている。一冊あたり150~300字弱とコンパクト。それだけに要領よくまとまっていて、手軽な読書案内になっている。記者によるらしい記述は、学者先生の不必要に小難しいばかりの語句や言い回しもなく、読みやすい。かいつまんで読んでいくと、多彩でユニーク、小粒でもけっこう使える。【2013年2月24日(日)の各紙からII】
「柔よく剛を制す」で車内睡眠
目立ったのは『[図解]電車通勤の作法』(田中一郎著、メディアファクトリー新書=日経読書面掲載)だ。ポイントは「柔よく剛を制す」だそうだ。流れにぶつかるのではなく、受け流す極意の指南書。車内でスマートに振る舞い、ぐっすり眠れるテクニックを教えてくれる。30点以上の図解つきだ。
著者は往復平均4時間の電車通勤を続けて28年目という猛者だ。埼京線運行前の超混雑路線として知られた赤羽線をはじめ、高崎線、東武東上線、丸ノ内線、山手線などを「走破」したお人らしい。で、「電車通勤士」を自称。通勤者のストレスを軽減する目的意識が芽生えて、2012年からは大学に入って心理学を専攻中という。
『星の王子さま、禅を語る』(重松宗育著、ちくま文庫=読売)もユニークだ。英米文学の大学教授を経て臨済宗の僧侶になった著者が、サン=テグジュペリの名作を題材に禅のマインド「色即是空」「空即是色」さらに「一期一会」などについて、わかりやすく語る。