奈良や京都を旅するなら、やはり日本史の基本は押さえておいた方がはるかに楽しめる。ならばロシアの古都でも――クレムリン宮殿などで知られる首都モスクワと旧都サンクトペテルブルク、そして「ロシアの歴史」揺籃の地であるキエフ(現ウクライナ)の3都市の魅力を紹介する本が出版された。読んで楽しめる「知の旅行案内」だ。
権力争いめぐる人間模様から美術・文化まで
『世界歴史の旅 ロシア モスクワ・サンクトペテルブルク・キエフ』(山川出版社)。日本の古事記にあたる、「ロシア」の古い原初年代記に描かれている伝説に彩られた草創期から旧ソ連を経た現在までの歴史を、それぞれの都市ごとにコンパクトにまとめている(A5判180ページ)。権力争いをめぐる人間模様から美術・文化まで幅広い視点が盛り込まれている。
写真や地図、人物画なども豊富で、実際に街や美術館を巡っているような気分も味わえそうだ。クレムリンのカラー写真・絵画やイヴァン雷帝の肖像画、「ウラジーミルの聖母」のイコン写真などが並ぶ。
著者は、著名なロシア研究者である一橋大学名誉教授の中村喜和氏と東京大学名誉教授の和田春樹氏。2013年1月に発売された。2940円。