霞ヶ関官僚が読む本
「安心」と「感情」にどう向き合うか 科学的リスク評価と「行政への信頼」

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感情的な側面も含めて「しっかりと耳を傾け」る重要性

   もう1冊。『安全。でも安心できない』(中谷内一也、筑摩書房)は、社会心理学的なアプローチから「安全」と「安心」の関係を考察する書。安心と安全をつなぐ要素として「信頼」の重要性を提示する。様々な社会的問題に直面する者にとって、本来、行政機関は「信頼できる第三者」の地位を占めることができるはずなのだが、現実には逆に不信の対象となってしまうことが往々にしてある。上でリスク評価の有効性について述べたが、だからといって科学的なリスク評価結果をやみくもに主張するだけでは「信頼」の醸成を逆に阻害しかねない。

   「安心」は主観的概念であり、「信頼」を通じて「安心」を実現しようとする以上、感情の問題に向き合うことは避けては通れない。政策についての社会的理解を得ようとするとき「リスク管理に携わる者は、まず、感情的な側面も含めてリスクにさらされる人の思いにしっかりと耳を傾け、相手の不安やおそれを理解することが必要だろう。そうすることが、今度は自分のリスク管理方針について、耳を傾け理解してもらう第一歩になる」という著者の指摘には傾聴すべきものがある。

総合官庁(課長級)SCORN

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【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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