犬にかみつかれて猫好きになったという「ぼく」の動物論がおもしろい。『犬とぼくの微妙な関係』(日高敏隆著、青土社)は、犬猫との日常生活をあれこれ書いたペット本かと思うと、それはごく一部。さまざまな動物たちが子を残す驚きの行動をわかりやすくまとめてある。書かれた動物たちそれぞれの大宇宙を読んでいくと、「人間だけが知的」と考えるのはたしかに、どうも怪しくなってくる。【2013年2月17日(日)の各紙からII】
「生きるためのロジック」に価値あり
「生物界の不思議に、ユーモアあふれる視点でせまるエッセイ集」と、東京新聞でノンフィクション作家の片野ゆかさんが薦める。著者は、犬の忠誠心と勝手気ままな猫の狭間で揺れ動く動物学者。この表題作や「ネコの教育」「ネコはどういう動物か」のエッセイもさることながら、本の中心は動物行動学の遺伝子論だ。
それぞれの動物が自分の遺伝子を持つ子孫を残すことを優先して生きているという考え方。これ自体は珍しくもないが、その戦略を研究し「生きるためのロジック」まで見つめたあたりに本の価値がある。
羽模様から配偶者を瞬時に選ぶクジャク、ハレムをつくり一生に二度性転換する魚、精子ごと冬眠するコウモリなどが登場する。多くの動物は徹底して争いを避ける。けがしたり死んだりしたら損だからだという理由からだ。