携帯電話やスマートフォンはどこまで進化していくのだろう。その最先端をいくのが全地球測位システム(GPS)の地図ビジネスだ。位置情報サービスの関連本が日経新聞に載った。そこには屋内でパソコン画面に食い入る人のイメージはなく、むしろ人を街へと誘う活動的なツール。現実世界を写しとるはずの地図にネットの機能がプラスされて、街も人も変わるかもしれない。【2013年2月17日(日)の各紙からⅠ】
ナビ性能が日常生活を変える
タクシーやピザの宅配を街角や公園にまで呼び出せる、海外旅行だって紙の地図を不安そうに広げることもない、GPSのナビ性能はすでに日常生活を変えつつある。
そのさまざまなビジネスを紹介したのが『フォースクエア 位置情報の威力』(カーマイン・ガロ著、日経BP社)。ゲーム感覚で人の街歩きを助ける機能は、そこにビジネスチャンスを生み、行政サービスにも使える。米国でいま人気上昇中という。本はスターバックス、トイザラスからNASA、アメリカ赤十字まで50以上の事例を紹介する。
ネットはどちらかというと人を室内のパソコン画面に吸い寄せてきたが、「今や位置情報サービスは、外へ出よう、街へ繰り出そうと誘いかける」と日経の評者・首都大学東京の水越康介さん。
『位置情報サービス』(佐野正弘著、マイコミ新書)は、位置情報とネットの組み合わせを解説した一冊。この新ビジネスに「観光産業からは期待の星、インターネット業界からはソーシャルの次」との声が出ているという。通勤や営業回りの風景を変えたゲームの世界から、現実の店舗案内や耳より情報へと広がる段階にきた。
ユーザーは消費者の大多数に
GPSの精度はもっと高まるだろう。地図はどんどん正確になり、そのユーザーはもう特定の愛好者や趣味の人たちに限らない。消費者の大多数が位置情報サービスつきのIT地図を手に買い物や街歩きをする時代が近づいている。
思えば、地図は文化の発達と重なってきた。『地図をつくった男たち』(山岡光治著、原書房)は、GPSよりはるか昔の地図づくりの歴史。これがなければ、現代の位置情報サービスもない。
球面状に凸凹のある地表を二次元の地図に表現するのは、最初は大変なこと。今日ではあって当り前の地図も「努力を重ねてきた先人たちの豊かな成果」と、評者の楊逸さんが朝日新聞で語る。この本は10日付の読売読書面でもとり上げられたが、命がけで測量を進めてきた技師たちの姿が感動的だ。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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