アベノミクスで円安が急速に進み、「日本発の通貨戦争」といった指摘も海外から出ている。この「通貨戦争」、日本は過去、実際に「中国」を相手に繰り広げた歴史がある。日中戦争(日華事変、1937年~)さなかのことだ。
日本が中国占領地域で独自通貨を発行し、中国側通貨に挑戦した史実に沿いながらストーリーが展開する、歴史・経済小説『カレンシー・ウォー 小説・日中通貨戦争』(オーズキャピタル・パブリッシング)が発売中だ。著者は、元大蔵(現財務)省官僚の大薗治夫氏。
「エコノミストによる終戦工作」とは
小説の前半は、上海に渡っていた主人公の元大蔵官僚・柳場賢が、中国貨幣改革で生まれた新通貨を日本側独自通貨によって駆逐しようと奔走する。通貨の力関係は、物資調達力に直結し、ひいては軍事面にも影響していく。中国の貨幣改革を推進し、主人公とも因縁があるイギリス財務官らも絡みながら事態は進んでいく。為替レートの変動や戦局の動きなどがスリリングに描かれている。後半は、「エコノミストによる終戦工作」を英米側から持ちかけられた主人公の決断と行動に焦点を当てる。その結末とは。
著者の大薗氏は、旧大蔵省に入省後、北見税務署長などを経て退官、中国情報発信ポータルサイト運営会社の代表兼編集長として上海に駐在した経験もある。著書に『中国を味方にして大成功する方法』(講談社)などがある。
2012年12月、発売。1890円。