霞ヶ関官僚が読む本
経営学から「成果主義」を暴く 「半分だけ正しい」手法の虚妄

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事実に基づいた経営と故小倉昌男氏

   事実に基づいて経営を全うすることは難しい。それができた経営者として、私は故小倉昌男氏(元ヤマト運輸社長)をあげたい。小倉氏の『小倉昌男 経営学』(日経BP社 1999年)は、稀有な経営者の手になる誠実・率直な本だ。また、日経新聞連載の「私の履歴書」をまとめた『経営はロマンだ!』(日経ビジネス人文庫 2003年)も、小倉氏の生い立ちからヤマト運輸引退後の福祉事業に新風を吹き込んだ熱い想いまでもカバーする好著だ。

   小倉氏は、もうからないと思われていた個人宅配市場を見事に発展させた。おかげで、我々は、気軽に各地の名物を取り寄せ、遠隔地の知人・縁者と物のやりとりもできる。氏が危機的状況にある会社の命運をかけて、かつて個人宅配便に乗り出そうとしたとき、先送り思考が強いサラリーマン経営陣は全員反対で、わずかに賛成してくれたのが、会社の行く末を真剣に心配していた労働組合の三役だった。石油ショック時に安易なリストラをせず、日頃から信頼を得ていたからだという。今、多くの日本企業は、組織の活性化、思い切りのよい事業展開で、ジリ貧を脱し、前向きに生きるかどうかの岐路にある。しかし、ギリギリの決断に、労働組合の真摯な賛同を得られる経営者が今何人いるのだろうか?

経済官庁B(課長級 出向中)AK

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【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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