勘三郎さん、団十郎さんの後継者たちは 歌舞伎の行末と魅力を探る

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   中村勘三郎さん、市川団十郎さんと歌舞伎界の名優が相次いでこの世を去った。新しい歌舞伎座のこけら落としを目前に控え、あまりにも早すぎる訃報だった。歌舞伎界はこの危機をどう乗り越えていくのか。勘九郎さんや海老蔵さんら若手への期待が高まるなか、歌舞伎の魅力と行末を考える。J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」(http//:books.j-cast.com/)でも特集記事を公開中

名門御曹司VS「成り上がろう」とする若者

『ぴんとこな』(1巻)
『ぴんとこな』(1巻)
『ぴんとこな』(1~8巻)

   歌舞伎の世界には外部の人間にはわかりにくい約束事や独特の言い回しがある。「ぴんとこな」もその一つで、「男らしく芯のある、二枚目」という意味だ。小学館(Cheeseフラワーコミックス)の『ぴんとこな』(著・嶋木あこ、1巻~8巻各420円)は、その「ぴんとこな」を主人公とする長編漫画である。月刊漫画誌『Cheese!』(小学館)に連載中で、これまでに8巻が刊行されている。

   歌舞伎界の名門に生まれたが実力のない御曹司と、歌舞伎とは無縁の家に生まれながら稽古を重ねて成り上がろうとする若者。正反対のふたりが同じ娘に恋をして――物語はそこから始まり、恋愛や家柄をめぐる羨望や嫉妬、役者としての試練と成長など様々な要素が入り交じる。夢中になって読み進み、気がつけば歌舞伎の世界にはまってしまうという仕掛けだ。

新聞記者が「素朴な疑問」解きほぐす

『だから歌舞伎はおもしろい』
『だから歌舞伎はおもしろい』
『だから歌舞伎はおもしろい』

   祥伝社新書の『だから歌舞伎はおもしろい』(富澤慶秀、777円)は、特別報道部という事件・事故の修羅場からひょんなことで演劇担当になった新聞記者が素人の目で見て、調べて、書いた歌舞伎の入門書である。「知らないことは恥ではない」をモットーに「何でだろう?」と素朴な疑問を解きほぐしながら歌舞伎の世界に案内する。

   「上(かみ)と下(しも)」、「女形」、「子方」、「仕掛け舞台」、「心中の美学」など歌舞伎の基本について興味深く解説し、今更聞きにくい「歌舞伎はどこで見られるのか」「チケットはどうやって買えばいいのか。いくらぐらいするのか」といった質問にも答えてくれる。劇場でついウトウト居眠りすることにも触れて「歌舞伎は気楽に見ればいい。日本人はもっともっと歌舞伎に親しむことが大切」と劇場に足を運ぶことをすすめる。

GHQにより「瀕死」の危機に

『歌舞伎を救ったアメリカ人』
『歌舞伎を救ったアメリカ人』
『歌舞伎を救ったアメリカ人』

   400年の伝統を持つ歌舞伎だが、戦後の一時期、瀕死の危機に陥ったことがある。軍国主義一掃を図る連合国軍総司令部(GHQ)の占領政策によって、『仮名手本忠臣蔵』『勧進帳』など多くの演目が追放の対象になった。集英社文庫の『歌舞伎を救ったアメリカ人』(著・岡本嗣郎、800円)は、まさにこの時、歌舞伎の危機を救った男の物語である。

   その男とは、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーの副官として通訳を務めたフォービアン・バワーズ。来日当時は28歳のアメリカ陸軍少佐だった。歌舞伎関係者にとって忘れられない恩人だが、なぜ、彼が日本の歌舞伎を守ったのか。実は日本人顔負けの歌舞伎通で、歌舞伎の研究者だった。もし、バワーズがいなければ、その後の歌舞伎の運命はどうなっていたか。今では異論もあるようだが、戦後の秘話を解き明かすノンフィクションの力作である。

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