【書評ウォッチ】「旅する巨人」宮本常一いま再評価 日本の島と村16万キロを歩く

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   昭和の民俗学者・宮本常一が今、読まれているそうだ。全国各地の風景と無名の人々を訪ねて4000日、地球4周分の16万キロを歩き、黙々と生きる人々を記録した。東日本大震災を経て再評価の声が高まった。

   その膨大な著作から『日本の村・海をひらいた人々』(ちくま文庫)を読売新聞がとりあげた。読書面でなく日曜版で「旅はうかうかとしてはいけない」という宮本の父の言葉を原点に、松本由佳記者が説き起こしている。【2013年2月3日(日)の各紙からII】

表舞台から遠い地域だからこそ

『日本の村・海をひらいた人々』(宮本常一著、ちくま文庫)
『日本の村・海をひらいた人々』(宮本常一著、ちくま文庫)

   この言葉は、宮本が故郷・瀬戸内海の周防大島を離れる際に父親にもらったという。旅で出会った人の身なりや家々、田畑をよくよく見れば、土地のありようや豊かさを学びとれるという意味だ。瀬戸の美しい風景を眺めながら語り合う父子の姿、たしかな絆を思わす一節。ここから宮本の旅と研究が始まった。

   宮本は日本全国を自分の目で見て回り、名もない人々の知恵と暮らしの工夫を聞きとった。いま大学のゼミあたりでしきりに持ち出されるフィールドワークの始まりだ。本は屋根の形、畳、間どりなどを調べ、クジラ捕りや一本づりにも触れる。歴史の表舞台から遠い地域だからこその貴重な記録。新聞日曜版は明るい話題に傾斜するが、その点を差し引いて考えても、宮本の功績は大きい。

   宮本の著作には、ほかに『忘れられた日本人』(岩波文庫)、『山に生きる人々』(河出文庫)、『庶民の発見』(講談社学術文庫)など多数。

   佐野眞一さんの『旅する巨人』(文春文庫)は宮本とその後援者・渋沢敬三の評伝。本の帯にある「日本中の島と村を歩き尽くした男がいた」が足跡を語っている。

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