【書評ウォッチ】猫にいやされ「○○力」求める 本が映す現代の一面

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官庁にまでがネーミングの理由は?

   一方、あふれる「○○力」本を分析したのは社会学の牧野智和さん。阿川佐和子『聞く力』(文春新書)は昨年唯一100万部を超えたベストセラー。以前の渡辺淳一『鈍感力』(集英社)、池上彰『伝える力』(PHPビジネス新書)、姜尚中『悩む力』(集英社新書)といったベストセラーもあげる。起源は赤瀬川原平『老人力』(筑摩書房)と牧野さんは見立てる。根拠はもう一つあいまいだが、この本ならご記憶の人も多いだろう。

   不透明な時代に力のネーミングがうけるのか。雑誌も「恋愛力」といった特集を組む。ただ、官庁までが「人間力」(内閣府)、「社会人基礎力」(経済産業省)とパクるところまでくると、人々の心理分析だけですませていいか疑問だ。福利切り捨ての理由に「自己努力」が持ち出され、言い訳や責任転嫁に都合よく使われたことを見過ごしてはいけない。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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