若者の過激な生態を大胆に
『蛇にピアス』
芥川賞の最年少記録は19歳。第130回(2003年下半期)の早大生、綿矢りさ。この時、同時受賞した金原ひとみも20歳だった。ともにこれまでの記録を塗り替え、若い女性だったこともあり、テレビや雑誌で取り上げられ社会現象になった。綿矢の作品『蹴りたい背中』が思春期の女子高校生の内面を描いた青春小説だったのに対し、金原の『蛇にピアス』(集英社文庫、400円)はピアスや刺青を題材に若者の過激な生態を大胆な筆致で捉えた作品だったことから、強烈な反響を呼んだ。
社会に衝撃を与えたといえば第34回(1955年下半期)の石原慎太郎の『太陽の季節』だが、選考委員だった石原は『蛇にピアス』について「浅薄な表現衝動としか感じられない」などと評しながら、記者会見では2作いずれかを選ぶなら『蛇にピアス』と述べていた。