ファミコンが誕生して30年。ゲームは人々の生活に深く食い込んだ。それは読書の世界にも反映される。若者向けのライトノベル(ラノベ)やマンガではゲームの仮想空間がしばしば舞台になり、現実の軍事や経済の分野でもゲーム的な手法が今や先端をいく。この「ゲーム的なるもの」の現実を、ライターのさやわかさんが朝日新聞でまとめた。
そこに登場するラノベや一般書の何冊かは、ゲームと現実の関係がここまできたことを語り、どこまでいくのかを問いかける。単純な否定論はもはや色あせ、つきあい方やこなし方の模索が始まっている。【2013年1月20日(日)の各紙からII】
現実世界をゲーム化する手法
「仮想空間もの」のラノベやマンガはますます高く支持されている。評者・さやわかさんは川原礫の『ソードアート・オンライン』(略称「SAO」、電撃文庫、既刊11巻)を例にあげる。高見広春『バトル・ロワイヤル』(幻冬舎文庫、上下)のような、ゲーム的なルールの中で人々が生死を争う「デスゲームもの」もヒットする。
「ゲームと現実を混同するな」という批判は、たしかにある。記事は触れていないが、ときには安易に犯罪を引き起こしかねないとの懸念もぬぐい切れない。
が、ゲームのような現実が一方にあるという評者の見方も、まさに現実味をおびている。
『ロボット兵士の戦争』(P・W・シンガー著、NHK出版)では、ドライブゲームのような機械で無人機を操作し、爆撃した後にPTAの集まりに出る米兵が登場する。「本物の戦争にゲームの手法が使われている」と評者はいうが、どちらが鶏か卵かは定かでない。
『ゲーミフィケーション』(井上明人著、NHK出版)は米大統領選挙のネット戦略も例示して、現実世界をゲーム化する手法について考察した。こちらはゲーム感覚を「これは使える」と取り入れた面が強い。したたかな活用術は世論操作や需要刺激につながり、現実に影響していく。「現実をゆがめる」側面があるか・ないか、検証が必要だろう。