日本は本当に「役人天国か」
条文が示すことになる内容の方の関係省庁などとの文案調整も大変だ。法案を作成するために人員が一室にかき集められることが多い。霞が関では自虐的に「タコ部屋」と隠語で呼ぶが、少ない人数で過酷な激務をこなす。身体を壊す国家公務員も少なくない。一般職(事務職)の国家公務員には、労働基準法や労働安全衛生法の適用はなく、厳しい労働基準監督署の立ち入りもない。
インターネット上で重宝される「社会実情データ図録」を運営する本川裕氏の新著『統計データはためになる!』(技術評論社 2012年)には、国・地方を合わせた公務員を話題にした「日本は本当に『役人天国か』~実際は数が少ない公務員」という項目がある。
本川氏は、行政改革が大きな課題になっている一方、「行政の不足」の面も同時に存在している可能性もあり、そのため国民の不幸が生じている可能性も大きいと指摘する。また、氏は、「日本の公務員が世界比較でみて人数が多いわけでもなく、他国の公務員に比べて給与水準が必ずしも高いわけではない」と「図録」で示した。すると、「公務員数や公務員給与水準における日本の位置づけについては、政治的な課題からの類推によって生じる大方の通念とは異なっているためネット上でも大きな議論」となったと記す。
法制執務のように、公務員の仕事の多くは機械で代替しにくい高度に集約的な人的労働で成り立っている。行政の停滞は許されないが、旧日本軍のように、現実を直視せず兵站を無視して少数の現場の頑張りに頼るだけであれば、組織の劣化が止まらず、日本の公共セクターが内外において無残な失態を繰り返す事態を避けることは遺憾ながら困難だ。
経済官庁B(課長級 出向中)AK
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