新しい年はどんな年になるか。そんなことを考えながら、こたつに入って本を読むのは冬の楽しみのひとつだ。気の向くまま気に入った本を読むのもいいが、読書計画を立てて、古典や名作に挑戦するのはどうだろう。そのヒントになりそうな3冊を紹介する。 J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」でも特集記事を公開中
生きるための武器だった
『強く生きるために読む古典』
人は何のために古典を読むのか。教養のためか、生きるためか。集英社新書の『強く生きるために読む古典』(著・岡敦、756円)は、タイトルの通り「強く生きるため」に独学で古典を読み込んできた著者の実践記録だ。政治活動の挫折、一家離散など起伏の多い半生で、ダメになりそうなとき、助けてくれたのが本だった。
取り上げているのは、『失われた時を求めて』(プルースト)、『悪霊』(ドストエフスキー)、『小論理学』(ヘーゲル)、『選択本願念仏集』(法然)、『異邦人』(カミュ)など9冊。自らを「できそこない」と称する著者にとって、これらの本が生き延びるための武器となり、仲間となった。単なる内容紹介ではない。重厚で難解なイメージのある古典に挑戦しようという勇気を与えてくれる異色の読書論だ。
「読書」基盤とするシニアライフのすすめ
『定年と読書 知的生き方をめざす発想と方法』
団塊の世代が定年を迎え、定年後の生き方が何かと話題になっているが、文芸社文庫の『定年と読書 知的生き方をめざす発想と方法』(著者・鷲田小彌太、672円)は、読書を基盤とするシニアライフのすすめである。なぜ読書なのか。著者はいう。人間は動物の中でも寿命の長い動物といわれるが、賢い動物ほど生き長らえる術を知っている。これは人間にも当てはまるので、「長生きしたいと思うなら、体を鍛えるのもいいが、まず頭を鍛えなさい。もっとも、頭も体の一部だから、『知』を磨きなさい、である」
定年後といえば、「晴耕雨読」という言葉を思い浮かべるが、なかなか実行できないのが実情だ。本書は、読書計画を立て、毎日の生活の中にきちんと読書を織り込むことが重要だと説く。読書生活の実践的なノウハウを伝授してくれる1冊だ。
「大人」になるために
『最も危険な名作案内 あなたの成熟を問う34冊の嗜み』
古今東西の名作にもいろいろあり、人間の素晴らしさや生きることの尊さを教えてくれる名作もあれば、人間の悪や愚かさ、人生やこの世の不条理について学ばせてくれる名作もある。ワニブックス【PLUS】新書の『最も危険な名作案内 あなたの成熟を問う34冊の嗜み』(著・福田和也、798円)が取り上げているのは、後者の部類に属し「子どもっぽい善意やヒューマンな常識から大きくはみ出している」名作のようだ。
目次には、「政治」への苛立ちと快楽、「女」の謎と解放、「賭博」による転生、「性」は信じるに値するか、「男」の愚劣さと比類なさ、といった項目が並び、それぞれのテーマに沿う西東三鬼、阿佐田哲也、坂口安吾、スタンダール、ドストエフスキーらの名作に思わぬ視座から光を当て、秘められた魅力を語る。「大人」になるための読書案内だ。