ささやかな問題提起の読書面であっても
こうした原発事故からの回復問題を読書欄が地味でも着実にとり上げる一方で、同じ日の読売一面は「再稼働容認首長54%」の大見出し。原発30キロ圏の市町村長にアンケートした結果だそうだ。大半が「条件つき」というが、政府による判断や周辺自治体の理解など当たり前のことばかりで、実質的には再稼働OKのサインともとれる。
影響力絶大な一面がまるきり「原発推進新聞」とあっては、十数ページあとの読書面はなんともささやかな問題提起だ。それでも人は原発事故から立ち直らなければならない。
『瓦礫の下から唄が聴こえる』(佐々木幹郎著、みすず書房)が毎日新聞に。大震災の後、詩人の著者と津軽三味線の二代目高橋竹山さん(女性)が釜石、大船渡、陸前高田の仮設住宅を回った。演奏と詩の朗読をしながら、想像を超す惨事から生き残った人を前に「緊張の連続だった」「舞台の上で身震いした」という体験を川本三郎さんが紹介している。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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