【書評ウォッチ】生き方・働き方論めだった2012年 街や地域への関心も

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   この一年、各紙読書面に目立ったのは「生き方」「働き方」に関する本だ。「街づくり」や「地域の再生」を模索する試みも関心を集めた。この二分野から、年の節目に「これは」という本と書評を整理しておこう。人々のさまざまな思いに寄り添い、世相をとらえてきた何冊か。どれも参考にできそうな見方や事例を独自のスタンスで書き込んでいる。【2012年の各紙から、今回はオススメ編】

会社と個人の関係をどう考えたら?

『現代日本の転機』(高原基彰著、NHK出版)
『現代日本の転機』(高原基彰著、NHK出版)

   『現代日本の転機』(高原基彰著、NHK出版、書評は9月2日日経読書面)は、個人と会社の関係を考えた。安定のために自由を差し出すかどうか。古くて新しい、今もつきまとう問題。多くの人がどう生きるかに迷い、希望を求めていることがわかる。

   同じ書評が遊牧民を意味する『ノマドの時代』(黒川紀章著、徳間書店)にも触れている。ピラミッド型の会社組織は減り、あるいは変わり、「望むと望まざるにかかわらず、日本人の働き方はノマド的にならざるを得ない」と評者の社会学者・古市憲寿さんが指摘する。

   企業に頼らずに仕事を見つける生き方が『ナリワイをつくる』(伊藤洋志著、東京書籍、8月12日朝日)だった。要は手に職を、自分で起業を、その組み合わせでいこうという話。立派な経験と信念だが、それだけのバイタリティが必要だろう。書評は通り一遍の学者的感想文。読者が個々の実力と立場をしっかり踏まえて読みこなせば、有用な本になる。

   正規・非正規の雇用問題が深刻化した一年でもあった。『会社員とは何者か』(伊井直行著、講談社、5月27日日経、東京両紙)は、ありそうでなかった本格的会社員小説について考えようとした。ネット上には「問題提起だけで新鮮さに欠ける」との評が。その通りだ。ただし、働き方の代表格なのに突きつめては扱われずにきた不可思議な存在を「あなたは誰?」と問いかける効果はあった。

   現実を具体的にしっかりと見つめた本も。『リアル30's』(毎日新聞社、11月11日毎日)は、青春期からずっと就職氷河期と不景気の30歳代が抱く「生きづらさ」を同世代の記者が掘り下げた。意欲的な新聞連載が単行本に。年代を超えて、今の社会と人のありようを考えさせる。新刊紹介にとどまらず、もっと詳しく解説する価値があった。

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