【書評ウォッチ】どう向き合う?在日外国人200万 日本変える起爆剤にも

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   いま日本に外国人が何人住んでいるか。正規の登録者数だけで213万人(2010年法務省統計)だと聞くと、改めて驚く人が多いのではないか。『「移民列島」ニッポン』(藤巻秀樹著、藤原書店)は移民・定住外国人の実状を調べたルポルタージュだ。そこから異質な文化がもたらす効果や可能性を現実的に考えていく。

   著者は取材のために愛知県豊田市の保見団地や新潟県南魚沼市で数カ月暮らしたという。「肉声が伝わってくる」と、自身フランスで外国人としてすごしたこともある慶応大の小倉孝誠さんが東京新聞で評している。【2012年12月23日(日)の各紙からI】

「慣れ合い日本社会に競争力を」

『「移民列島」ニッポン』(藤巻秀樹著、藤原書店)
『「移民列島」ニッポン』(藤巻秀樹著、藤原書店)

   欧米諸国に比べれば割合は低いが、「200万という数はけっして無視できない。しかし我々は彼らについてよく知らない」と評者。実のところ日本はもう、本のサブタイトルのように多文化共生社会なのだが。

   移民は日本社会を変える点火剤になるのではないかというのが、この本の考え方だ。同質社会の慣れ合いが競争力を削いでいるとすれば、外国人の異質な文化が打ち破ってくれるかもしれない。こんな日経記者の著者らしい期待と観測がこもる。

   第一章「日本移民地図」で、出身国と現居住地域の関連をいくつも指摘。第二章以降でブラジル人が集まる豊田市保見団地、アジア人の街・東京大久保、さらに南魚沼の農村にやってきた外国人妻の、それぞれの人や地域がかかえる課題を浮き彫りにしていく。

   その彼らも景気に翻弄され、ブームに沸き、教育に悩む。言葉や風習の違いから日本人とのトラブルもある。自治体やボランティアの活動は支えだが、施策面の立ち遅れも。

   評者は「異文化理解、多文化共生は理屈や制度の問題ではなく、外国人たちとの日常的な交流によって実現される」と記しているが、果たして交流だけですむことか。その答えを新年早々にも出し、問題の整理と改善を進めなければならない。民主党による政策が自公への政権交代でどう変わるかも、しっかりと見きわめる必要がある。

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