【書評ウォッチ】ミサイル、領空侵犯… 企業や大学の「軍事技術拡散」注意せよ

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   北朝鮮が事実上の長距離ミサイルを発射、中国機が尖閣上空を領空侵犯……危なっかしいニュースが駆けめぐっている。シリアでは化学兵器サリン使用の危険性がささやかれる。共通するのは、いまこの時も世界中で進む軍事技術の拡散だ。私たちの生活をも脅かす凶器の出所を問う関連本を日経新聞が読書面にまとめた。

   遠い話ではなく、日本の企業や大学も技術開発や留学生の受け入れを通じてかかわりかねない。知らぬ間に拡散を手助けしてはいないだろうか、検証と用心が必要だ。【2012年12月16日(日)の各紙からI】

テロ組織が無人機を使ったら

『ロボット兵士の戦争』(P・W・シンガー著、NHK出版)
『ロボット兵士の戦争』(P・W・シンガー著、NHK出版)

   いま爆発的に普及しているのが無人機に代表されるロボット兵器だといわれる。もう先進国だけのものではない。イラン製の無人機もすでにある。『ロボット兵士の戦争』(P・W・シンガー著、NHK出版)は、国際テロ組織が無人機を使って大量破壊兵器をまきちらすシナリオに触れる。この分野が発達すれば、戦争そのものが変わってしまう。

   「既に現実味を帯びつつある」「国際ルールづくりも急務になってきた」と、評者の日経・高坂哲郎さんは危機感をつのらせる。

   英エコノミスト編集部の『2050年の世界』(文芸春秋)は、軍事技術の拡散が先進国の財政悪化などと相まって進む可能性を指摘している。

留学や研究開示が軍事バランスを崩す時代

   日本も無縁ではない。世界に売る商品には、使い方によっては兵器の製造につながりかねない技術も。『輸出管理』(浅田正彦編著、有信堂高文社)は輸出取り決めの最新事情から主要国の取り組みまでを紹介する。たしかに、バカに凶器を持たせてはいけない。

   大量破壊兵器の開発が懸念される国からの留学生受け入れや、諸技術の研究論文の発表・開示にも問題が。日本の大学や企業が軍事バランスを崩す時代に入っているという。

   経営上の要請から留学生をかき集める大学もある。理工系の学部や大学院などは技術拡散の危険をどこまで認識しているのだろうか。書評の指摘は、きわめて現実的な問題だ。

   そうした危険な戦争を防止する仕掛けの一つに文民統制(シビリアンコントロール)がある。軍人を文民が抑えるという発想。これが本当に有効なのかを問う『シビリアンの戦争』(三浦瑠麗著、岩波書店)が、朝日新聞に。むしろ危険な面があると論じる一冊。

   今回の総選挙でも、勇ましい発言をする政治家が立った。「当事者意識のない文民たちの安易な好戦論」と、評者の山形浩生さんが危惧している。これが進めば、歯止めはない。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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