テレビや新聞といったいわゆる「マスメディア」は、その強い世論形成力や社会的影響力から、時に「第4の権力」と呼ばれ、政治や行政を上回るレベルで、国家の向かうべき進路や、市民の生命、身体、財産等の命運を確定づけてきた。
他方において、昨今のインターネットをはじめとする「メディアの多様化」の流れの中で、これら伝統的なマス媒体は大きな岐路に立たされている。
新旧のメディア、どこに向かうのか
戦後、表現の自由を重視する西欧型民主主義国家として再出発した我が国では、マスメディアの報道内容を行政当局が一般的に規制・監督する法律は存在しなかった。(1)災害時や選挙時における適切な報道体制を整備する若干の個別立法と、(2)公共の財産である有限希少な電波の割当を受ける「放送」に限定してその番組編集の自主・自律の枠組みを担保する「放送法」、等が存在するのみである。そして、近年急速に台頭する「インターネット」については、掲示板の誹謗中傷コメントの削除等に関する民事ルールを規定する「プロバイダ責任制限法」などわずかな立法にとどまっており、現実にWeb上のサイトは玉石混合で、伝統的なメディアにおいて長い年月をかけて形成されてきた報道倫理や秩序が十分に確立されている状況とは(まだ)言いがたい。
筆者は入省以来ほぼ一貫してメディア行政にたずさわってきた。これら新旧のメディアがこれからどこに向かっていくのか、そしてそれが日本の社会・政治・経済や市民の生活にどのような影響を及ぼし、変化をもたらしていくのか、関心をもって注視している。