時の権力者に対して冷静な見方を保持するために
篤実な在野の歴史家として知られた故萩原延寿氏は、「君主論」を「権力者の『神経中枢』に肉薄し、その生理と病理を的確に解明した」と喝破する。氏は、「いい古されたことだが、マキャヴェリはけっしてマキャヴェリストではないし、『君主論』は、権力者にとって、自分の手の内が見すかされているだけに、必ずしも好都合な書物ではない」という(「声低く語れ 『林達夫著作集』」『書書周游』 文藝春秋社 1973年・萩原延寿集5 朝日新聞社 2008年)。時の権力者に対して冷静な見方を保持するためにもぜひ一読をお勧めする。
様々な権力者の盛衰をみた、マキアヴェッリの卓抜な洞察を紹介して終わりとしたい(上掲中公文庫「25 運命は人間の行動にどれほどの力をもつか、運命に対してどう抵抗したらよいか」)。
「……さて、結論をくだすとすれば、運命は変化するものである。人が自己流のやり方にこだわれば、運命と人の行き方が合致するばあいは成功するが、しないばあいは、不幸な目をみる。
わたしが考える見解はこうである。人は、慎重であるよりは、むしろ果断に進むほうがよい。なぜなら、運命は女神だから、彼女を征服しようとすれば、打ちのめし、突き飛ばす必要がある。運命は、冷静な行き方をする人より、こんな人の言いなりになってくれる。……」
経済官庁B(課長級 出向中)AK
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