深まり、せこくなるネットの闇
「ネット選挙を実現すべきだ」と著者は説く。選挙期間中こそ、メディアなどで指摘される諸問題に候補者が考え方や政策を示す機会だ。ネットなら費用もほとんどかからない。なのに、サイト更新をしばる公職選挙法の壁。「これは決定的に古い」と評者。「ウェブで動かす」ためには、制度の更新こそが必要だ。
この本とはちがう意味で、ウェブは選挙にすでに影響している。特定の党や候補者の演説予定に合わせた動員の呼びかけが流れ、会場や選挙カーをヤジ怒号がおしつつむ。こうした「プロの市民」を誰があやつっているのか。「ネットと政治」の怪しげな現実だ。
脱原発デモを呼びかけるブログに、一般市民を装って候補者の写真がちゃっかり入れられることもある。政治にかかわると、ネットの闇はいっそう深まり、せこくなる。
ほかには、『脱原発とデモ』(筑摩書房)を東京新聞が載せた。原発問題で街に出て意思表明した24人の言葉。瀬戸内寂聴、鎌田慧、柄谷行人さんらの顔ぶれだ。ここにもウェブよりは古いけれど、発信の有力な手段がある。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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