霞ヶ関官僚が読む本
指導層のレベル「日本VS中国」 「闘争」「実務力」ここまで違うのか

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

「官僚資本主義的な社会主義国家」

   こんなすさまじい社会においては、自己保身しか考えない権力亡者でないと政治闘争を勝ち抜けないのではないかとすら思う。ところが、習近平も含め歴代国家主席や最高権力集団=政治局常務委員会(通称チャイナ・セブン)の経歴を眺めてみると、その多くは重要な地域の書記を複数経験、チベットを始めとする政治的に困難な地域の暴動鎮圧など行政経験実績は豊かだ。習近平・次期国家主席も浙江省と上海市の書記を歴任、実績をあげたうえで抜擢されている。ポピュリスト指向の薄煕来はちゃんと失脚するようなシステムも機能している。

   また、共産党には幹部育成のための党校があり、政治学から経済学にいたるまできちんと教育されることになっているらしい。国の指導層は実際の実務や政務を経験、淘汰されてきた人材で、政治的腐敗にまみれているかどうかは別にして知的にも能力的にも優れている。ひとことでいえば、まさに「官僚資本主義的な社会主義国家」(チャイナ・ナイン)が出来上がっている。

   翻って日本の首相閣僚といった指導層の選別課程はどうか。政策の実務経験をほとんど積まないうえに、中国のような熾烈な権力闘争を経ているわけでもない。党としての教育も、地方で実務の実績を積むことも少ない。自分の名前を連呼する「どぶ板選挙」で風に吹かれて当選した人材が中国の指導者層と対峙するとき、それが経済競争の分野であっても国際外交の世界であっても、「勝負あり」、と思ってしまうのは私だけだろうか。

経済官庁A(審議官級) KY

   J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

姉妹サイト