昭和天皇がゴルフを楽しんでおられた様子は一部の人にはよく知られた話だが、公表された資料などを丹念に調べた『昭和天皇のゴルフ』が主婦の友社から2012年11月に出版された。著者の田代靖尚氏は電通社員時代から週刊誌などにゴルフの連載コラムを書いていたゴルフ通。退職後、東大文学部日本史学科の研究生となり、天皇のゴルフが現代史とどう関わっていたかを追いかけていた。
皇居吹上御苑には後に9ホール
昭和天皇はどこでゴルフをやっておられたのか。田代氏は文献資料からコースの推定見取図を画いている。新宿御苑には9ホールあって、1番ホールは122ヤードでパー3。もっとも距離のある8番ホールは292ヤード、パー4だった。新宿はちょっと遠いということで造られた赤坂離宮のコースは6ホール、那須御用邸には9ホール、そして皇居吹上御苑には当初は4ホール、後に9ホール、パー30に拡張された練習コースがあったという。これらのコースで、毎日のように楽しまれた時代もあった。その様子は「ゴルフご運動」と新聞や書籍記録されている。
ご一緒するのは皇后ほかの皇族、侍従長、女官など。天皇は結構な腕前で、スイングはフィニッシュがきれいに決まっていたという。
ゴルフに対して独自の考えをお持ちで、「心を鎮め、精神を纏め、禅に虚無という言葉ありと聞く」と、単なる運動ではないと話しておられたという。
昭和12年(1937年)、盧溝橋事件から日中戦争に入るころ、天皇は国事を全うするためゴルフを捨てたと田代氏は書いている。戦後もゴルフをなさることはなく、趣味の一つであるテニスは今上天皇に、もう一つの趣味だったゴルフは常陸宮に受け継がれたという。
定価1600円。