ようやく決まった衆議院解散で、選挙騒ぎが当分つづく。今回はほぼ確実に政権交代しそうなことが特徴だ。この政治状況、実は戦前と「錯覚するほど似ている」のだそうだ。民主・自民の二大政党制はどんな意味があるか。「考える手がかりを歴史書に求めると、本書に行き着く」という一冊を東京新聞がとり上げた。
『昭和戦前期の政党政治』(筒井清忠著、ちくま新書)。おかたい書名はとっつきにくいが、政争を繰り返して何も決められない既成政党、問題の一挙解決を叫ぶ第三勢力、どこかで聞いたような図式が浮かんでくる。【2012年11月18日(日)の各紙からI】
政争に明け暮れる二大政党がダブって
「本書は今日的な問題関心と斬新な分析手法によって、戦前昭和の政党内閣の歴史を再現する」と、評者・政治外交史の井上寿一さん。民主・自民に対するのは、戦前の政友会・民政党。類似点は劇場型政治、メディアの影響、危機意識のなさ。「政争に明け暮れる二大政党は今の二大政党と二重写しである」という。
著者は「実行力・決断力なく没落していく既成政党と一挙的問題解決を呼号しもてはやされる維新勢力という図式がつくられやすい」と語る。著者、評者とも歴史は繰り返すとのフレーズに実感がこもる。
そこに、どんな教訓が? 「危機意識を持つべきは政治家も国民も同じだ」と評者。「あきらめるのは早すぎる。複数政党制の時代は始まったばかりである」とも。そうだろうけれど、やや遅すぎた観もありますよと言っては悲観的すぎるか。答えは選挙のあとに出る。
国民の幸福度をどうはかる?
ほかでは、政治が本来めざすはずの「国民の幸福」を、さてどうはかるか。ブータン国王来日から、物質的豊かさのGNP(国民総生産)に代わって、満足度を心理面にまで広げたGDH(国民総幸福)の考え方がフレッシュだった。
その国をイメージにとらわれずに見つめた『ブータン「幸福な国」の不都合な真実』(根本かおる著、河出書房新社)を毎日新聞が。「決して反ブータン本ではない」と評者の中村達也さん。指摘されるのは難民問題。人口60数万人の国が10万人を超す難民を生み出している。国連高等弁務官事務所の現地事務所長だった著者の見聞は傾聴に値する。国民を幸福にさせることとは、今さらながら簡単ではなく、複雑な事業だ。
『幸福度をはかる経済学』(ブルーノ・S・フライ著、NTT出版)が日経に。生活の満足度の測定方法や政策問題を論じるが、こちらは専門書の域を出ない。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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