90歳の著者に清少納言が「乗り憑った」 瀬戸内寂聴の鬼気迫る書

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   90歳になっても、脱原発のハンストをし、意気軒昂な瀬戸内寂聴氏だが、3年の月日をかけ、清少納言の晩年を綴った小説『月の輪草子』を、講談社から2012年11月1日に刊行した。

   源氏物語の現代語訳をしてから15年にして、そのライバル清少納言を扱うことになったが、本の帯には「清少納言が私に乗り憑ってくれた」とある。

   「月の輪」とは、晩年の清少納言が人目を忍んで暮らした場所のことだ。

ライバル紫式部の死を喜ぶ

『月の輪草子』
『月の輪草子』

   この地で、枕草子を書いた若い頃の才気走った自分を振り返って恥じ入ったり、ライバル紫式部の死を喜んだりと、勝気であけすけで歯切れのいい女性像が描かれている。著者のいう通り、著者と清少納言がダブッてくる感じがしてくる。

   だが、清少納言が山道で草むらに潜んでいるとき、知らず自分の悪口をいいながら道を通って行く者たちに対して、繁みのかげで放尿して驚かしたというエピソードには、見てきたような作家の想像力の凄みを感じさせられてしまう。

   そして、中宮定子に仕えていた当時、宮中で出会った人々のこと、自身の結婚のことなどを生き生きと述懐していく。90歳の著者が、途中病気などで止まりながらも書き下ろしを書き上げ、中宮の悲惨な最後を書き切っていて、著者の人生をかけたような思いが伝わってくる、魂のこもった書だ。

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