霞ヶ関官僚が読む本
国際会議と「武士道」の関係 「日本のソフトパワー」生かす道

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外交官OBに助言求めると…

   もう1冊の『武士道』(新渡戸稲造著 PHP研究所)については、国際会議への対応を模索する中、外交官OBの方に助言を求めたところ本書の名前を挙げられたので、改めて読み直してみたものである。

   恥ずかしながら、『武士道』を初めて読んだ時は、「日本男児の心得」を日本人に対して説くことを意図とした本だと想定して読み始めたため、期待外れという印象しか受けなかった。だが、このたび国際担当となって、ナイの『スマート・パワー』を読んだ後に改めて読み返してみると、何のことはない、この『武士道』という書物、そしてそこに描かれる武士道精神そのものが、世界最強と言っても過言ではない日本のソフトパワーの根源ではないかと痛感している。

   『武士道』は、外交的打算に基づくプロパガンダといった低い志ではなく、元は農学者でありキリスト教徒である新渡戸が、日本人の倫理・道徳観や行動原理について諸外国の理解を得たいという一心に立ち、欧米における類似・対比の例や古くはギリシャ哲学者等の言葉も引用しつつ説明を試みようとしているものである。行間からにじみ出るその狂おしいほどの思いは、読む人を惹きつけずにはおかないであろう。

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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