今年(2012年)の夏の定期異動で初めて国際関係の担当ポストに着任し、9月から約3週間開催された4年に一度の大規模な国際会議への対応の責任者となった。国際関係と言えば、日米・日中関係といったバイ(1対1)の関係や日ASEAN、TPPなど関係国がある程度限定された枠組みについての話題が上ることが多いが、筆者が担当する国際会議は190か国以上が加盟する国連の専門機関による会議である。
開催までの限られた期間の中で、マルチの国際会議における自らの振る舞いを模索する中で読んだ2冊の本を紹介したい。
ジョセフ・ナイが説く「信頼される具体的な行動」の重要性
『スマート・パワー 21世紀を支配する新しい力』(ジョセフ・S・ナイ著 日本経済新聞出版社)。ジョセフ・ナイは、クリントン政権下において国防次官補等を歴任し、現在はハーバード大学にて教鞭を執る米国の外交・安全保障政策の大家である。彼は本書の中で、国際社会における力の移行・拡散や世界的な情報化が進展する中、今後の米国の外交方針として、従来重要視されてきたハードパワー(軍事力や経済力を背景とした強制や支払い)に加えて、ソフトパワー(魅力や説得による誘引)の活用を重視していくことの必要性を強調し、両者の源泉となる資源を総合的・戦略的に組み合わせた「スマート・パワー」を発揮することの重要性を提唱している。
特にソフトパワーの活用については、意図的な宣伝活動と見られれば効果は望めず、信頼される具体的な行動こそが重要だと強調しており、示唆に富む。