不景気と雇用不安のただ中で、いま働き方は大問題。青春期からほぼずっと就職氷河期を過ごしてきた30歳代の多くが感じる「生きづらさ」とは何か、同世代の記者たちが掘り下げた『リアル30’s』(毎日新聞社)が毎日読書面の新刊欄に。
なにやら自社出版物の自己紹介めくが、本の内容は充実している。どの年代が読んでも、この社会と人のありようを考えさせられる。実際、これでいいのか、いいわけがない、ではどうしたら……新聞連載を書籍化、ツイッターに寄せられた声も多数収録した。【2012年11月11日(日)の各紙からII】
果敢な試みと希望も提示
1978~82年ごろに生まれた世代。思春期のころにバブルが崩壊し、日本の社会も経済構造も大きく変わった。効率化という掛け声の下で、非正規雇用が増え、果てが今の「閉そく感」「うんざり」「先の見えない」状態。この世代が、仕事や結婚、出産、育児など人生の選択局面を迎えている。
紙面の連載は、どうにも冴えない世の中を、さめた目で見つめる世代のリアルな生きざまを取材。反響は大きく、ツイッターの専用アカウントのフォロワーは6000人以上という。
記事の、したがって本の内容は多種多様だ。正規・非正規、未婚・既婚、都会・地方、「一つとして同じものはなく、一くくりにできない」と書評にある。「しかし、絶望や苦悩だけではない。自分たちで社会を変えようとする果敢な試みと希望も提示する」とも。
この種の「仕事もの」は今や一つのジャンルだが、きまじめに続けてきた取材姿勢は評価に値する。企業の発想にとらわれず、おもねないことも良い。書評自体がタイムリーな社会問題からとかく離れがちな毎日読書面の中でも異彩を放っている。
イヤなヤツにはこうしたら
軽めの「仕事もの」では、『出世するキレ方』(楠元博丈著、文饗社)が、朝日読書面のビジネスコーナーに。どぎついタイトルだが「仕事をする上で、イヤなヤツとの接触は避けられない」と、評者の清野由美さん。その時のキレ方21パターンを指南する。
感情にまかせて暴れることではない。まず「いなす」のだそうだ。たとえば「いやヘコむわ! そんな『公開仲間外れ宣言』されても!」と自虐ネタで切り返すとか。「一度マジギレしてすぐ謝る」のも有効という。出世主義がいいかどうかはともかく、関係を維持しつつ問題解決を図る技術として参考にできるかもしれない。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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