全国各地のアンテナショップが集結する東京・有楽町の東京交通会館。2階に上がると、1階や地下の賑わいとはうって変わって、いつでも静かだ。
ニゴロブナを塩と米で1年ほど漬け込んで発酵
そんななかに、滋賀県のアンテナショップ「ゆめプラザ滋賀」もある。観光情報の提供やお土産品の販売を行っており、彦根市の人気キャラクター、ひこにゃんのグッズも少々。そのひこにゃんに倣ったわけでもないだろうが、店内はわりとゆるい雰囲気である。
店先の小型冷蔵ショーケースには、滋賀が誇る伝統食の鮒鮨(ふなずし)が数種、販売されていた。この鮒鮨は「すし」と言っても、すし飯の上に魚が乗っているあのすしとは違う。琵琶湖の固有の魚であるニゴロブナを、塩と米で1年ほど漬け込んで発酵させたものだ。
近年はそのニゴロブナも数が激減してしまったため、他のフナを使うことが多いというが、今回購入した「あゆの店きむら」(彦根市)の「鮒寿し切身」(1050円)は天然のニゴロブナを使っているということだ。
発酵の進んだチーズのような味
鮒鮨では、魚を漬け込んだ米を魚と一緒に食べるかどうかが、ひとつの問題であるらしい。発酵してドロドロになった米は、一般的には取り除いて食べないのだそうだが、この米の愛好者もいるという。今回の「きむら」のものは、米は魚からあらかた取り除いてあり、米は魚の下にシートで隔たれて敷いてあった。ごく薄く輪切りになっていて、一片の長さは5センチほどと小ぶりだ。オレンジ色の腹子が目立っている。
さて、この鮒鮨の「評判」はいろいろと聞いていたが、食べるのは初めてである。口に含むと、かなりの酸味が広がって、思わずウッと声がもれそうになる。この味は、全然ゆるくない。はじめて食べると「腐ってるのではないか」と勘違いする人が多いことから、「くさり寿し」との異名を取るそうだ。酸味に若干慣れると、発酵の進んだチーズのような味なども感じられた。
地方に個性的なグルメは数あれど、これほど強烈な味はなかなか少ない。ひこにゃんも、はじめて食べたときはさぞ驚いたことだろう。
商品名:鮒寿し切身
製造:あゆの店きむら
価格:1050円