【北京発】店の棚から包丁が、タクシーから窓ハンドルが消えた 党大会でネットなど規制の嵐

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   最近、中国に住むお友達からのメールが途絶えがちではないですか?もしそうだとしても、相手に嫌われたわけではないのでご安心を。「規制」のせいだ。

   2012年10月中旬から2週間、自宅でのインターネットへのアクセスが非常に悪くなった。メールを閲覧しようとすると、FireFoxの接続中のマークがずーーーーっとぐるぐる、ぐるぐる回り続け、その後「接続が切断されました」のメッセージが出る、という始末。あのぐるぐるマークを何時間むなしく見つめたことか……。

メールが機能しない

   筆者はBecky!というメールソフトを使っているが、サーバーからのダウンロードが数時間もかかってやっと1通、という状態が何日も続いた。サーバーのサイトで直接確認しようにも、メールの画面が表示されるのが超遅いか、あるいは上記のように途中で切れる、という状態。Yahooメールを使っている日本人は揃って「メールがつながらない」とこぼしていた。夜中だけちょっとつながりやすくなり、そのときにあわてて緊急メールがないかチェックしたりして何とかしのいだ。しかし、メールが読めない、返事が書けない、というのは今の時代、かなりのストレスだ。この期間に友人を何人かなくした気がする……。

   10月26日にはNew York Timesのサイトへのアクセスが遮断された。同紙が、温家宝首相一族の巨額な財産についての記事を掲載したせいだろう。NHKのニュースを見ていて、ちょうどその温首相の財産のニュースになったとたん、ブチっと放送が切れ、しばらく黒い画面が続いた。まあこれも、中国ではよくあることである。

   もともと中国では政府の規制でYou TubeもTwitterもFacebookも使えない(VPNを通せばアクセスできる)。規制サイトが時々変わるようで、使っていた自分のブログやホームページにアクセスできなくなる、という事態もまま生じる。

「反政府的なメッセージ」を警戒

   今回の規制は、第18回中国共産党大会(11月8日開幕)に向けた対策で、規制はネットだけではない。New York Timesによると、この期間、反体制派人物は自宅に監禁されたり、北京から遠くへ「旅行」にいくように仕向けられたりしているという。商店の棚からは包丁が消えたというので、本当かと思ってイトーヨーカドーに行って探したが、確かにがない。店員さんに包丁はと聞いたところ、鍵つきの棚にしまわれていて、そこからものものしく出して見せてくれた。買わなくて、申し訳ない……。

   風船、伝書鳩、リモコン式おもちゃの飛行機、ピンポン玉などの「空を飛ぶもの」は、「反政府的なメッセージを運ぶ可能性がある」ものとして、怪しいものリストに挙げられているとのことで、この時期、うっかり風船をもって外に出ることもできない。

   北京のタクシー運転手は、座席の窓が開けられないよう窓を開閉する手動ハンドルをはずすよう命じられているという。乗客が窓から反政府メッセージをつけた風船を飛ばしたり、反政府スローガンを書いたピンポン玉を投げたりするのを防ぐためだという。

   今週になって、自宅のインターネットへのアクセスは改善され、メールが使えるようになったが、郊外に住む知人はもう1週間、超スローでGmailが開けられないと嘆いている。共産党大会が終わる11月14日ごろまで、ネットの規制がさらに強化された「封網」状態となり、場合によって電話も通じにくくなる可能性があるとの報道もある。

   この時期、万一中国のお友達からメールも電話もなくても、どうか絶交しないでほしい。

小林真理子

【プロフィル】

小林真理子(こばやし まりこ)
北京在住3年のフリーランスライター&翻訳業。
趣味は旅行と武道。

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