霞ヶ関官僚が読む本
尖閣外交「1発逆転」はあるか 「現代の古典」に学ぶ「構想力」

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外交政策決定過程の閉鎖性と情報公開の重要性

   また、高坂氏は、我が国では、職業外交官の誤ったくろうと意識に由来した外交政策決定過程の閉鎖性が最大の障害となって、世論に呼びかけ、話し合い、そこから支持を得てくるということができずにいることを鋭利に指摘し、「外交が世論の強力な支持を得たとき、日本は外交政策を持つといえる」と断ずる。これは、ハロルド・ニコルソンの古典「外交」(UP選書 東京大学出版会1968年)、細谷雄一氏の入門書「外交 多文明時代の対話と交渉」(有斐閣Insight 2007年)や味わい深い名著「大英帝国の外交官」(筑摩書房2005年)でも指摘されている議会制民主主義下の外交政策と職業外交官による外交交渉の区別の問題でもある。ただし、急いで付け加えなければいけないが、戦後の日本の平和と繁栄には、日本外交が大過なく遂行されてきたことが間違いなく寄与した。政府不信に対応するには、最近本格化した外交文書の適切な管理・保存と一定期間後の公開が説明責任を果たすために死活的に重要だ。

   まずは、歴史を真摯に振り返り、高坂氏やニコルソン氏の著作のように、長く読み継がれてきた現代の古典を吟味し、将来を構想して、「日本が外交政策を持つ」地道な努力が必要だ。ここに至れば、1発逆転ホームランのように形勢を一挙に逆転できるような解決策はないとみるべきだろう。

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【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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