ひっそり醸成されていた世界一の文化
『新幹線お掃除の天使たち』とは、そろいのユニホームでテキパキと清掃作業をこなし、ときには乗客案内までする人たち。列車内の掃除をするだけだった「地味なJR子会社が、いかにして変身したのかを心温まるエピソードとともに分析している」と、評者の佐々木俊尚さんが拍手をおくる。
フランスの国鉄総裁が「これを輸出して」と言ったとか。もはや「おもてなし業務」とよんでいいレベルだ。バブルのころにこれほどの接客文化はなかったそうで、その後の不況にも耐えながらひっそりと醸成されてきた。ただ、グローバル化や社会の階層化から「いつまで豊かな生活文化を維持できるのか」と心配するのは評者だけではないだろう。
近ごろどうも冴えない国でいつの間にかしっかり育まれていた「世界一の現場力」。貴重な文化を守るために何をしたらいいのか、本が一人ひとりに問いかける。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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