【書評ウォッチ】日本農業に正しく絶望するには? 刺激的に問題をえぐる

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消費者の食味も鈍化

   本はさらに、名ばかりの有機農法やマニュアル化された大規模生産などを容赦なく批判。消費者の食味の鈍化もやり玉に。食生活の乱れから消費者が品質を見分けられなくなる。すると自然、良品の供給が消えていくというのだ。

   農業と農政の頼りない現状は、この国全体の閉塞感と無縁ではない。補助金のぶんどり合いとばらまきは、もうやめないか。非効率な農政を変えるきっかけにしたい本だ。

   ほかに、農業関係では『稲の大東亜共栄圏』(藤原辰史著、吉川弘文館)と、これも変わったネーミングの本が東京新聞に。太平洋戦争期に日本がアジアでおしつけた品種改良米をめぐる農学史の一コマ。『東京満蒙開拓団』(東京の満蒙開拓団を知る会著、ゆまに書房)が朝日や読売などに。昭和初めの不況下で旧満州に送りだされたのは、まず東京にあふれた失業者だったという市民グループの調査記録。国策が誤ると、泣くのは庶民だ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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