東京駅のリニューアルで東京のどまんなかに巨大なショッピングタウンが出現した。モールはもう郊外型の大型商業施設というだけでなく、大きな駅や空港、さらにテレビ局の社屋などにも増殖中だ。こんな街のありようを解説した『都市と消費とディズニーの夢』(速水健朗著、角川oneテーマ21)が毎日新聞の著者紹介欄「本と人」に。一方、そうした華やかさとは一見離れた生活空間の「団地」にスポットをあてた本と人が読売新聞に載った。進化・変貌する街と暮らしをそれぞれの視点から考えている。【2012年10月21日(日)の各紙からI】
都市計画とモールとテーマパーク
『都市と消費とディズニーの夢』で紹介されるのは、従来のイメージにある郊外型のモールではない。六本木ヒルズや代官山アドレス、東京スカイツリーなど都心のきらびやかな施設が中心で、「ショッピングモールと呼ぶにはやや違和感があるかもしれない」と毎日の記事もいう。
米国では20世紀前半からモールがあり、荒廃したダウンタウンの再開発など社会的課題解決の手段として活用されてきた。この点で、モールを商業施設ではなく「都市計画の延長」と著者はとらえる。本はウォルト・ディズニー晩年の都市づくりに注目し、都市計画とテーマパーク、モールの関わりを掘り下げた。
モールの手法を用いた再開発「ショッピングモーライゼーション」の進行を指摘したことに、記事(署名・手塚さや香記者)は「脱成長を肯定して方策を探る風潮に対し、活を入れたいという刺激的な論考」と評価している。