「秘密の花園」描き一大センセーション
『乙女の港』日本人作家として初めてノーベル文学賞に輝いたのは、1968年の川端康成。受賞記念講演「美しい日本の私」も話題を呼んだ。新感覚派の代表的作家といわれ、繊細な日本の美を追求、美しい文章で多くの名作を残した。『伊豆の踊子』『雪国』『千羽鶴』『山の音』など、映画や教科書でもお馴染だ。
実業之日本社の文庫『乙女の港』(著・川端康成、画・中原淳一、800円)は、昭和12年(1937年)から翌年にかけて、少女向け雑誌『少女の友』に連載された少女小説。横浜のミッションスクールを舞台に女学生同士の疑似恋愛的な「秘密の花園」の世界を描き、中原淳一の優美な挿絵の魅力もあって、女学生の間で一大センセーションを巻き起こした。川端はまだ名の知られていなかった作家中里恒子の草稿をもとに書いたといわれる。