映画でも話題を読んだグラスの出世作
『ブリキの太鼓』1999年にノーベル文学賞を受賞したのは現代ドイツを代表する作家、ギュンター・グラス。集英社文庫の『ブリキの太鼓』(著・ギュンター・グラス、訳・高本研一、1部740円、2部840円、3部720円)は映画でも話題になった出世作だ。3歳で成長のとまったオスカルがブリキの太鼓の音色にのせて語る猥雑で奇怪な物語が、激動のポーランドを舞台にナチス勃興から戦後復興までの30年を背景にダイナミックに展開される。
グラスは作家活動だけでなく、アメリカのアフガニスタン侵攻に異議を唱えたり、今年(2012年)4月にはイスラエル批判の詩を発表したりするなど政治的発言にも積極的なことで知られる。2006年には若いころナチスの武装親衛隊に入隊していたことを告白して論議を呼んだこともあり、その言動は常に刺激的だ。