冷え込みを増すこれからの季節、怖いのは風邪、インフルエンザといった「ウイルス」が原因の感染症だ。そんな中、こうしたウイルス対策に効果のある特別な乳酸菌があるとのニュースが飛び込んできた。なんと乳酸菌としては世界で初めて、ウイルスへの抵抗力を「直接」高める効果が確認されたという。
乳酸菌でウイルスを防げる?――意外な話だが、動物実験ではすでにかなりの効果が出ているとのことだ。その名も「プラズマ乳酸菌」。詳しい話を聞くべく、キリンホールディングス・フロンティア技術研究所主任研究員の藤原大介さんを訪ねた。
普通の乳酸菌はウイルスに「直接的」に効かない
pDCに普通の乳酸菌、プラズマ乳酸菌を入れたときの反応。無添加(左上)、プラズマ乳酸菌(右上)、普通の乳酸菌(左下)。普通の乳酸菌では何も入れなかった場合と変化が無いが、プラズマ乳酸菌を入れるとpDCに角が生えて活性化しているのが分かる/右下は、電子顕微鏡で見たプラズマ乳酸菌
そもそも人体は、細菌とウイルスに対してそれぞれ別の防衛システムを持っている。細菌への防御を担当する「マクロファージ」に対し、ウイルスと戦うのは「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」の役割だ。
ウイルスを探知するとpDCは活性化し、名前の由来ともなった樹状の突起をにょきにょき伸ばす。いわば臨戦態勢に入るわけだ。この状態を普段から保っていれば、ウイルスに感染しにくくなる、また感染しても治りやすくなると考えられる。
食品を通じてpDCを活性化させる方法を探った藤原さんは、乳酸菌に着目した。当時、乳酸菌はマクロファージの活性化効果は確認されていたものの、pDCに対する効果はないと考えられていた。
pDCに「直接的」に働きかける乳酸菌は、果たして存在するのか――研究に着手したのは2010年初頭、チームは2人だけだった。
藤原さんらは100を超える乳酸菌について、pDCへの効果を調査した。定説どおり、ほとんどの乳酸菌にpDCは反応しなかった。ところが、ごくまれにpDCを活性化させる乳酸菌があることに、藤原さんらは気づいた。