民衆と行政のちがいに主権者は?
その意味でとり上げたのが『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(湯浅誠著、朝日新聞出版)。年越し派遣村で知られた湯浅さんが、民間の運動と行政の論理の違いや民主主義の面倒ぶりを大阪の現状から説いた一冊。それでも湯浅さんは「自分たちで決めるのが民主主義だ」と。ここらへんは評者も「主権者である私たちが自ら動き、社会をつなぎ、政治や行政を動かしていく」というが、議員や秘書の数と特権ばかりを守ってきた国会にどこまで有効だろうか。総選挙の匂いも漂い始めた今、しっかり見きわめたいところだ。
原発問題については、『原発危機 官邸からの証言』(福山哲郎著、ちくま新書)を読売が。震災後の首相官邸の対応を官房副長官だった著者が記録した。菅直人首相に対しては「出過ぎて混乱を招いた」との批判もあった。が、この本からは原子炉冷却をめざした官邸と、廃炉を恐れて決断しない東電の姿が浮かぶ。菅批判に「有効な反論」と、評者の政治学者・細谷雄一さん。いつか歴史の審判に価値ある資料となるかもしれない。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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