【書評ウォッチ】デモ無視は「議会自壊」の前兆か 今に通じる繰り返す歴史

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   首相官邸や国会議事堂の前に集まる反原発デモは、もはや軽視できない存在だ。だが、それを軽視あるいは無視してきた人たちがいる。政治家・国会議員たちの全部とは言わないが、かなりの多数。両者の異様なまでのコントラスト。ここから人々のデモと代議制民主主義を考えた関係本が朝日新聞の読書面トップに。「国会は本当に国民の多様な声を反映しているのか」と、評者・政治思想史の宇野重規さんが問い詰めている。内容はおかたいが、今や懐かしい著者名もよみがえるように載っていて、けっこう読める。【2012年10月14日(日)の各紙からI】

マルクスがばかにぴったりと

『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』(カール・マルクス著、平凡社ライブラリー)
『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』(カール・マルクス著、平凡社ライブラリー)

   民衆と議会のすれ違いから深刻な危機に発展した例がヨーロッパにはある。それを分析して代議制民主主義のあり方を追究した古典が『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』(カール・マルクス著、平凡社ライブラリー)だ。マルクスというと、その主義への賛否はともかく、近ごろは一時代前のイメージを持たれがちだが、本の主旨はわかりやすい。おまけに現代の日本と照らして、ばかにぴったりフィットしそうな教訓でもある。

   労働者の貧困が深刻な19世紀のパリ。不満を募らせる議会外の人々と、党派対立に明け暮れる議会のありさま。立ち上がった労働者を、議会の諸政党は秩序派をつくって弾圧する。その秩序派も自滅。両者共倒れ。結果的にナポレオン1世の甥・ナポレオン3世が台頭してしまう。

   「自らを批判する外部の声を否定したときに議会制は自壊する」「人々の思いも、それが政治的に適切に反映されることがなければ、いつか行き詰まる」と評者は読みとっている。

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