「失敗と挫折」乗り越えた自伝的読み物
『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』端正な顔付き、謙虚な態度。その一方で、ユーモアと家族思いの優しさもある。山中教授は、今や子どもから中高年の女性にまで大変な人気だ。講談社の『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』(著・山中伸弥、聞き手・緑慎也、1260円)は、これまでの歩みについてエピソードを交えながら語った自伝的読み物である。
子どものころからよく勉強ができたが、柔道やラグビーに熱心で生徒会活動にも積極的に取り組んだ。希望通り整形外科医になったものの手術が下手で周囲のじゃまになるから「山中」ではなく「ジャマナカ」といわれた。そんな失敗と挫折を乗り越えてのノーベル賞だった。中学生にもわかるように書かれており、理科離れが進むなか、この本がきっかけとなって科学をめざす少年少女が増えてほしいものだ。