【書評ウォッチ】新卒ニート3万人の危機 原因は企業か大学か

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   大学の「新卒ニート3万人」といわれる時代。働く意欲はあっても仕事がないのは企業のせいか、大学の責任か、ほかの何かがいけないのか。関連本が日経新聞読書面トップに載った。なんとかしなければと言われながら、こんな状態がすっかり定着。改善に社会の本気度が問われる。それとも、もう仕方ない?【2012年10月7日(日)の各紙からII】

「働く場への移行が機能不全」

『若者はなぜ「就職」できなくなったのか』(児美川孝一郎著、日本図書センター)
『若者はなぜ「就職」できなくなったのか』(児美川孝一郎著、日本図書センター)

   この春に大学を卒業したのは約56万人。15・5%の8万5000人が進学も就職もしなかった(文部科学省の学校基本調査)。ニートは「働く意欲のない若者」とされるが、意欲があっても仕事がなければ、どうしようもない。これを評者・慶応大学の太田聰一さんは「就業意欲の低下よりもむしろ、大学から働く場への移行が機能不全を起こしている」と見る。

   企業が非正社員を増やしたのは確かだが、大学側にも問題があるという批判も強まっているのだ。進学率が上がり、以前なら学力が達しなかった人までが大学に入る。「エンプロイアビリティ」と横文字をあてるまでもなく、「雇用される能力のある学生がどこまでいるか」との声が経済界にある。

   『若者はなぜ「就職」できなくなったのか』(児美川孝一郎著、日本図書センター)は、就職のためだけのキャリア教育の落とし穴を指摘。社会や職業の知識、さらには労働者の権利などについての情報を与えるべきだと強調する。

   『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』(沢田健太著、ソフトバンク新書)は、大学発表の就職率の欺まん、大学の銘柄にこだわりつつそれを隠す企業について歯に衣着せずに。ショーイベント化する企業説明会といった「就活の病理」も描きだしている。

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