健康寿命を伸ばすためのカギは、「ドミノ骨折」をいかに防ぐか――帝京大学医学部の松下隆教授は、そう喝破する。
松下教授は2012年9月13日、日本整形外科学会が主催した記者説明会に登壇、「介護を受けたり病気で寝たきりになったりせず、自立して健康に生活できる期間」、すなわち健康寿命と、「骨折」との密接な関係について論じた。
「大腿骨近位部骨折」が寝たきり原因の上位に
日本人の平均寿命は、男性79.55歳、女性86.30歳だ(2010年時点)。一方、健康寿命は男性70.42歳、女性73.62歳で、つまり約10年は「誰かの世話にならなければならない状態」(松下教授)ということになる。
その大きな要因となっているのが、「骨折」だと松下教授は語る。厚生労働省の調査によれば、要支援・要介護状態になる原因の10.2%が、「骨折・転倒」だという。
「高齢者の骨折で一番問題なのが、大腿骨近位部、つまり足の付け根の骨折です。ほとんどは『ちょっとつまずいて転んだ』程度のことが原因で、ここを折ると約半数は骨折前の機能を取り戻せず、5人に1人が1年以内にも亡くなるとも言われています。欧米各国では発生率が減っているのですが、日本では増加を続けています」